STORY

5/8 サンメノウ編追加


 昔々、まだ「国」が存在しなかった時代、各種族は分け隔てなく平和に暮らしていました。しかし人間が秘宝と呼ばれる4つの特別な力を手にして以降、世界は変わり、人間以外の種族は虐げられ屈辱の日々を過ごすこととなったのです。

 やがて各種族の長が集い人間を打ち崩す計画が立ち、大きな犠牲の元人間側は敗北。それぞれの種族は秘宝を危険な力とみなし、封印することに決めました。


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 それから随分時は経ち、現在。

 人外たちの暮らす「イェフシ」、人形やメカニックたちの暮らす「サンメノウ」、天使と悪魔が暮らす「ミュテラサイト・ニュクラス」の3国は、それぞれ「秘宝」を大切に守りながら平穏に暮らしていました。

 秘宝を狙う「怪盗団」の噂を聞きつけるまでは。


 巷でささやかに広がる怪盗団の噂はやがて王の耳まで届き、秘宝奪還を危惧した各国の王は秘密裏に怪盗団を炙り出す策を講じていきます。


「国民は必ずこのルールを守る事。守らぬ者は罪人とみなし極刑とする。」


 特殊な方法で国民にのみ出されたこのお触れは怪盗団の耳に届くことなく広まりました。


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 一方、白紙地帯。ここはどの国にも属していないため、国を追われた人間が居を構えていることも珍しくありません。そしてひときわおんぼろの屋敷跡にその7人は住んでいました。


「怪盗団」


 巷でそう噂される彼らの狙いは各国が守る「4つの秘宝」そして「人間による国家再興」でした。各国王の出したお触れをものともせずに彼らは秘宝奪還の作戦を決行します。


「ボスを再び玉座へ。」

そう残して6人の怪盗団員は各国へ散らばったのでした。


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<ミュテラサイト・ニュクラス編>5/6更新
潜入団員:ミケ(ミュテラサイト)、ギュスターヴ(ニュクラス)
秘宝奪還状況:ミュテラサイト 失敗(捕縛)/ニュクラス 失敗(捕縛)


約束の時刻を過ぎても天は青く、そして柔らかな日差しはこの樹海の奥地まで届いていた。

「あのオッサン…失敗したか…?」

ミケは小さく舌打ちをして通信機に手をかけた。何度声をかけてもギュスターヴからの反応はない。耳障りなノイズだけが鼓膜を過ぎ去っていく。


『いいかミケ坊。約束の時刻になっても天候が変わらなきゃ、こっちに何かしらのトラブルがあったってことだ。そん時は悪ぃけどよ、こっちのことは見捨ててくれや。』


そう言って頭を撫でたギュスターヴの顔を思い出す。秘宝奪還の作戦のため、命を捨てる覚悟はできていた。だけど仲間が命を失う覚悟は―…。

ミケはかすかに震え始めた両手をぎゅっと握りしめた。


正直言うと、ミュテラサイトの防衛はガタガタで誰でもすぐに秘宝を盗み出すことができる。だからこのまま盗みに行ったってきっとすぐに奪還できるはずだ。だけどニュクラスはそうじゃない。天高くそびえるミュテラサイトの地下を掘るように存在するあの国は、気性の荒い国民も多く地形も複雑で環境も悪い。現王がひどく人間を憎んでいて、入国した人間たちはほとんどが生きて帰ってこないともいう。そんな中でもし捕まったりしたら何をされるか―…、考えたくもない。脱出するのは不可能に近いと考えていい。


ギュスターヴは見捨てろと言った。でも。

”二人で”秘宝を奪還すると決めた。ギュスターヴが秘宝を奪還すればボスに遠隔操作で天候を操っていただける。そうすれば地上のミュテラサイトは混乱に陥り、その混乱はやがてニュクラスまで到達するだろう。そうして生まれた隙を突いて二人で逃げ帰る約束だった。


”二人で”


ミケは勢いよく立ち上がると大きく深呼吸をした。
「ボス、作戦を変更します。」

そうしてニュクラスに続く街道へと翔けて行った。

 

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「さて…どうしたものか。」

低く、そしてうっすらと憎しみのこもった声が頭上から降ってきた。

「随分ドブ臭いネズミが紛れ込んでいたものだ…。」

先ほどまで下品な笑みを浮かべながら罵ってきた悪魔たちは慌てて居住まいを正す。顔を見ずともわかる。この威圧的な空気を纏うこの男は―…。

「直々にお出ましか、ニュクラスの王さんよ。」

黒い靄のような鎖に拘束され床に押さえつけられたギュスターヴは王を見上げると皮肉たっぷりに笑った。交差する視線は緊張感をはらんでいる。そこらに居る下等の悪魔たちがその恐ろしさに怯えて岩陰に隠れるほどだ。

「お前も随分『運が悪い』ね。まさかクルーシブル(禁止区域)の暴動に巻き込まれてしまうなんて。」

蔑むように笑う王を睨みつけながら、ギュスターヴは袖に仕込んだナイフに手をかけた。


本来であれば適ったはずの秘宝奪還作戦。だが秘宝の安置されている第10階層に到着する寸前、9階層にある「クルーシブル」で大きめの暴動が起きてしまった。「クルーシブル」とは制御不能になった悪魔たちを拘禁しておくいわば牢のような、閉鎖病棟のような場所だ。各階層に存在するそれには地下へ下るほどより危険な悪魔が拘禁されているという。9階層のクルーシブルはまさに手の付けられない悪魔たちの巣窟…。ギュスターヴは暴動の隙を突いてなんとか10階層の手前まで到達したが、暴動を聞きつけた王直属の守衛たちに捕縛されてしまい、このありさまというわけだ。


運が悪い―…か。

王のこの余裕たっぷりの笑み。そして「偶然」起きた暴動―…。

まるで自分を捕縛するためのお膳立てのようだな、とギュスターヴは吐き捨てるように笑い、もう一度王に向き直った。

だがまだ運は尽きてない。王が来たことで雑魚たちはおそらく使い物にならないだろう。注意すべきは背後に立つ守衛二人と王、この3人だけだ。秘宝の奪還はかなわずとも、隙を突けば何とか逃げ帰れるかもしれない。


ギュスターヴがナイフを握りしめ意を決したその時。慌ただしく悪魔たちがやってきて王に何かを耳打ちした。

「ふ、…ははっ!」

王はひとしきり笑うと、ギュスターヴに向き直って心底楽しそうに顔をゆがめた。

「ネズミ、ミュテラサイトからの贈り物だそうだ。」

王の背後、奥の暗がりから悪魔に担がれ現れたのは羽根の接続部を壊されたミケの姿だった。

「境界付近で飛んでいた所を撃ち落としたんだと。下では白い羽根は目立つからな。愚かな虫だ。」

目の前に投げ出されたミケは微動だにしない。かろうじて息はしているようだが何度名を呼んでも反応がない。

あれほど捨ておけと言ったのに、助けに来ようとしたのか…。クソッ、頭のどっかでは分かっていたはずだ。こいつが一人で帰りはしないだろうこと。もっと強く突き放しておくべきだった。そうすれば―…。


ギュスターヴはギリ…と奥歯を食いしばり、そして握りしめたナイフを再び袖に戻した。

「すまん、ボス、一旦ゲームオーバーだ。」

最後の通信が届いたかは、分からない。


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<イェフシ編> 5/7更新
潜入団員:ナナ、ニル
秘宝奪還状況:成功(ナナ捕縛/ニル無傷帰還) 


「…ナナ!やったぞ!」

ニルは秘宝をニワ(カルメリタの愛称)特性バッグに詰め込むと勢いよく部屋を飛び出した。石造りの立派な居間で巨大な王は愚かにも眠りこけている。ナナが集めに集めた情報をもとに展開された今作戦はある種力尽くで、だけどこの国には最も効果のあるものだった。


食べることにしか興味のない王には大量の睡眠薬入りを。人間の頭部を食べることに執着している官僚たちには毒入りの食事を。王家に食料を献上し、料理人たちを懐柔していたニルだからこそできた荒業だ。毒耐性のある官僚たちの息の根を止めたあとは、秘宝を奪うのみ。


ニルは闇夜に紛れ城を後にした。

ナナは安全な集落で待っているはずだ、急いで向かわなければ。


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「皆さん、お腹…すいてませんか?僕が美味しいごはん振舞っちゃいますよ!」

魚人たちに囲まれながらナナは満面の笑みで乱雑に縛られた両手を精一杯動かしてみせた。


「ハラヘッタ…ニンゲン、クウ…オマエ、クウ…。」

血走った眼でナナを見下ろす魚人たちは盛大に腹を鳴らしながらじりじりと近づいてくる。ナナはわずかに後ずさりしながら周囲に目を凝らした。島全体がざわざわと騒がしく、遠くでは派手な喧嘩でもしているのかドォンという地響きや、叫び声が轟いている。


いったい何が起きた…?


この島の住人たちは争いを好まず、他種族にもかなり温和で優しい。そして何より王家や秘宝に興味がない。だからこの島を拠点にしていたのに。


異変が起きたのはニルから「秘宝を手に入れた」と連絡がきてすぐのこと。

先ほどまで楽しく会話していた魚人たちが急に獣のような唸り声をあげ、瞬時にナナを捕えたのだ。さすがのナナも予測不能なこの事態に手も足も出すことができなかった。


「もしかして、秘宝の能力が漏れ出している…?持ち出してしまったからでしょうか…。」


この国の守る秘宝の能力は「認識能力の向上」

擬態や変装が意味をなさず瞬時にバレてしまうという僕ら怪盗団員にとってはかなり厄介なものだ。

もし本当に秘宝の能力が漏れ出しているのならこれほど危険なことはない。なんたってこの国で人間は牛や豚と変わらぬ食用肉同然なのだから。現に目の前の魚人たちも滅多にないご馳走(僕)に腹をゴロゴロ鳴らしている。


「実は僕、めちゃくちゃ料理が得意なんですよ!皆さんの大好きな人肉もたくさんご用意できますよ!採れたて焼き立ての美味しいお肉はいかがですか!」

通じているのか通じていないのか、もはや表情から読みとる事もできないけれど。とにかくここを何とか切り抜けなければ。ナナは動きが制限されているにもかかわらず、どこからともなくフライパンと大きな肉塊を出して精一杯アピールした。


ニルさんさえ無事でいてくれたら。秘宝をボスに届けてくれたなら―…今はそれで十分。

きっとニルさんは近くまで来ているはず。少しでも彼が動きやすくなるように出来るだけたくさんの人外さんたちをここに呼び寄せておこう。だからどうか-…。


「ほーらみなさん!料理はまだまだありますからね!たくさん食べてくださいね!」

ナナは次から次に肉を焼いては魚人たちに振舞った。香ばしい香りに誘われて魚人以外の人外たちも次々に集まってくる。遠くではいまだ轟音が響いているというのにまるでここだけ祭りのような騒ぎようだ。


『-ナナ!無事か!?』

通信機の向こうでひどく焦ったニルの声が聞こえた。


「あっ、ニルさん!すみません、待ち合わせ場所には行けそうになくって。でも安心してください!人外さんたちは出来るだけこっちで引きつけますから!申し訳ないんですけど秘宝はお任せしますね!必ず!必ず追いかけますから!」


『ガシャンッ』


料理を待ちきれなかった魚人の手がナナの耳をかすめて耳に埋め込んでいた通信機がそのはずみに床に落ちて壊れてしまった。これではもう、連絡を取ることができない。

帰れるだろうか。ボスの元へ、皆の元へ-…。

―ううん、帰るんだ。きっと何とかしてみせる。大丈夫、大丈夫、大丈夫…!

ナナは弱音を吐きそうになるのをぐっと抑え込んで満面の笑みを貼り付けた。


「さぁて!まだまだ作りますよ!」


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『-ず、必ず追い ガシャン! -…ジジジ…』

激しい音とともに通信が途切れた。

予定よりも少し遅れて待ち合わせ場所に行くと、念のためナナにつけていたルナ(ベンガルワシミミズク=ニルの相棒)とヴィン(大鷹=ニルの相棒)だけが帰ってきたので何があったのかと連絡したのだが、どうやら緊急事態らしい。


「助けねぇと…!のわっ!!おい!!」

振り返るニルの顔にルナが覆いかぶさり、 ヴィンとベル(大鷲=ニルの相棒)は冷静になれと言わんばかりに髪をつついてくる。

「わ、分かった!分かったって!」

ニルは大きく舌打ちをして再び走り出した。


「とにかくまずは秘宝を届ける!んで!その後すぐにナナを助けに向かう!いいよな!」


相棒たちは高らかに鳴いて空を駆け回った。

あいつは案外したたかだし、機転が利く。ナナならばきっと生き延びられるはずだ。

「ナナ…!待ってろ!!」

ニルは再び闇夜の中を駆けて行った。

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<サンメノウ編> 5/8更新
潜入団員:カルメリタ(通称=ニワ)、リヒト
秘宝奪還状況:成功(ニワ捕縛/リヒト無傷帰還) 
 

数日前からサンメノウの各地では電気系統のトラブルや事故が多発していた。店やインフラはもちろん、エネルギーを動力源とする人形たちにもかなりの影響が出ており、住人たちは不安な日々を送っている。

メンテナンスを担当する業者や整備士、仕立て屋(=人形を作る人間)が軒並み駆り出されるせいで街中の日常業務にも支障が出始めた頃、カリスペラは外界への意識を閉ざして各地で起こる事故やトラブルの原因究明のため電子の深層空間へと意識を飛ばすこととなった。

この国全体の情報をインプットし続けるカリスペラは情報整理を兼ねて定期的に”眠り”につくことがある。ただ今回のように各地で起こる不審な事象を検証するための”眠り”はかなり珍しい。


「留守はお任せを。」


武装した兵士たちが厳重に王を取り囲み、人知れず王は眠りについた。


サンメノウは秘宝から流れ出る能力(=無尽蔵のエネルギー)をもとに稼働する人工的な国だ。封印された状態であっても、この小さな国ひとつ程度ならば何不自由なく動かせるほど、膨大なエネルギーが流れ出している。そしてその安定したエネルギーの供給により、住人たちは何不自由なく穏やかに暮らしていた。国は機械的に安定していて、開発段階での火災事故は多少あれど、これほど多様な場所で頻発することはかなり珍しい。


珍しいというよりは-…。


王はあらゆるデータを洗い出しながら、国民に信号を送りだした。


「怪盗団員の炙り出しに尽力せよ。」


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「おっと、まずいな。リヒトさん。急いだほうがいいかもしれない。」

『民間人立ち入り禁止』と描かれた看板が乱立する路地を抜け梯子を上った先、天高くそびえるドームの頂点、太陽を目前にクロウは振り返った。クロウの背後で重火器を放つ準備をしていたリヒトが怪訝そうに顔を上げる。

「カリスペラに勘づかれたかもしれない。」

クロウはリヒトに道を譲ると追手への対策を始めた。

クロウはこの国の住人でありながら、現王体制に異を唱え次期王に座す企みを持つ反乱者でもある。リヒトら怪盗団とは目的は違えど到達点は同じであることから今だけ協力関係を結んでいた。

「ニワ、聞こえていましたか。予定より数刻早いですが実行に移します。」

『おっけー!』

通信機の向こうでニワはやたら元気に返事をした。任務遂行中とは思えぬ陽気さにクロウは苦笑いしているが、こう見えてニワはかなり出来る奴だ。


この地へニワと降り立って少し経った頃、自身の経営する服飾店の人気や売り上げに固執し始めた時はどうなる事かと思ったが、彼は電気系統に異常を引き起こすよう細工を施した商品を次々にヒットさせ、見事に国全体に行き渡らせた。そうしてこの数日間の内に次々とトラブルを引き起こすことに成功。おかげで整備士や兵士はあちらこちらに引っ張りだこで警備は手薄、おまけに王は情報処理に追われ”眠り”についた。この好機を逃すわけにはいかない。


一方リヒトはというと、腕利きの機械工として密かに人気を博しており、各所からの情報をうまく聞き出していた。その結果、秘宝はあの人工太陽の内部に安置されていることが判明。外殻を重火器で破壊した後、単身乗り込み奪還するつもりだ。

秘宝の恩恵をなくしたこの国は闇に包まれ、やがて停止するだろう。残るのは動力を必要としない一部の旧式人形と仕立て屋のみ…。

『非常電源はほとんど壊しちゃったんだけどぉ、王様付近はガードが固くって、リヒトが秘宝を抜き取ってからじゃないとダメかも。』

「分かりました。」

ニワに軽く返事をすると、リヒトは自身と同程度の大きさの重火器を人工太陽に向けて放った。


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「おーうさまっ♪」

強制的に目覚めさせられた王の傍らで覗き込むように見下ろしていたニワがにっこり微笑んだ。

「王様にはびっくりするくらい十分な量の予備電源があるだろうなって思ってたんだよね。だからちょこっとだけ細工させてもらったんだぁ。お目覚めの気分はいかが?」

”眠り”から半ば強制的に引き出された王は突然の来訪者に驚きもせず、ただじっと見据えた。周囲にはガラクタのように崩れ落ちた兵士の姿が暗闇の中にぼんやりと浮かぶ。暗闇だ。もう、何年も何百年も見ることのなかった、闇だ。


「-…。」


深い深い情報の波の中、異端者を捉えかけたところで世界が遮断されるのを感じた。急いで目を覚まそうとしたが何者かに蓋をされ自らの意思で起動することができなかった。あれがこの異端者の言う『細工』なのだろう。

彼らのことを把握していなかったわけではない。些細なこと、と見逃していたのだ。そのわずかなほつれが繋がっていき、そしてほつれは大穴を生んだのだ。処理能力が徐々に落ちていくのが分かる。王は己の身体が錆びていくような感覚に襲われ、焦るようにニワをつかんだ。


「僕と、遊ぼ。」


ニワは再びにっこりと笑う。王の手をするりと抜け出して、飛んだり跳ねたり登ったり、まるでうさぎのように王の視線を、腕を、思考を我が物にする。その間にも王の処理能力は落ちてゆく。秘宝を失ったサンメノウは徐々に停止してゆく。


「-…。」


王が巨大な手でニワを鷲掴みにすると、ニワは再びくすくすと笑った。

『ニワ、先に脱出しますよ。』

しんと静まり返った部屋の中、最大音量に設定された通信機の向こうからリヒトの声が響く。


「おっけーおっけー!おつかれリヒト!…へへ、ゲームオーバーだね、王様♡」


カリスペラはニワを捕えたまま動きを止めた-…。

 


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<帰還編> 5/9更新 


ニルがアジトに戻るよりも先にリヒトが到着していた。ボスはにこやかな表情でニルを迎え入れる。

「おかえり、ニル。よく帰ってきたね。」

「ボス!!ナナが…っ!ナナを助けに行かせてください…!!あっ、あとこれ、秘宝…!」

ボスが言い終わるよりも早くニルが声を荒げた。ボスに縋ろうとするニルをリヒトが静かに制止する。

「落ち着きなさい。」

ずしっと両肩にヴィンとベルが、頭のてっぺんにルナが乗っかる。ニルよりもよほど冷静だ。


「帰ってきたのは二人、か。」

ボスはにこやかなまま、だけど静かに怒りを湛えた表情で二人に向き直す。リヒトの持ち帰った秘宝とニルの持ち帰った秘宝を手に取りしげしげと眺めた。


「秘宝奪還のためにはまず彼らに帰ってきてもらわないといけないね。そう思わない?」


リヒトは「ボスが望むならば」と軽く答えた。その横でニルは見たことないほど首を縦に振っている。ボスは再び笑顔を貼り付け、二人にひとまず休むよう進言すると一人になった廃墟の片隅で宙を鋭く睨んだ。


「このまま、引き下がると思わないことだ―。」

小さく、低く放たれたその言葉は誰に届くこともなく闇の中に消えた。



To be continued...

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行こう、仲間を助けに。

そして秘宝をすべてボスの元へ―…。


【簒奪せし玉座と君臨せし秘宝】

2028年秋 第2弾開催決定!!

詳細は追ってお知らせします。